禿げたオッサンのツンデレ話―『春風のスネグラチカ』沙村広明【メディア芸術祭】
こんにちは。
本のいいとこおすそわけのコーナーです!
『春風のスネグラチカ』は2014年度の第18回文化庁メディア芸術祭、マンガ部門の優秀賞を受賞した作品。作者は沙村広明さん。マンガ・エロティクス・エフで2013年〜2014年に連載されていました。
あらすじ
舞台は1933年、極寒のロシアを舞台に「ロシア革命」によって帝政ロシアから共産主義ソビエトへと変化する激動の時代。とある別荘(ダーチャ)の管理人であるイリヤ・エヴゲーニヴィチ・ブイコフは、車椅子の少女・ビエールカと物言わぬ従者・シシェノークに出会い、「私が勝ったら、あの別荘に一週間泊めて下さい」と奇妙な賭けを申し込まれる。ブイコフは賭けに勝ったものの亡命することになり、結果ビエールカとシシェノークが別荘に住みつく。しかしながらすぐに秘密警察(OGPU)に捕らえられ、過酷な運命に巻き込まれていく。なぜ、そしてどこから彼らはこの地にやってきたのか。互いだけを頼りに生きる二人が背負う密かな宿命とは―。(メディア芸術祭HP参考)
さあ、登場人物の名前は覚えられましたか?僕はロシア系の名前はからっきしだめ。カラマーゾフの兄弟を読むときにどれだけ苦労したか…
(上がビエールカ、下がシシェノーク)
全ては「ツン95%のツンデレっ娘物語を描きましょう!」と編集長と盛り上がっていたところから始まりました。(あとがきより)
と書いてあるものの、そんなに明るい学園もののはずはなく、金髪ツンデレ娘を求めて読むと後悔する。
沙村広明さんというと『ブラッドハーレーの馬車』の印象が強い。
詳細は省くが、『ブラッドハーレーの馬車』は救いのない陰惨な物語だ。 だから本作も乾いた絵のタッチで暗い暗い物語になるのだと思っていた。しかし、その予想は裏切られた。
主人公のビエールカとシシェノークは突然現れる。主人公と書いてあるのに、2人の関係は明かされない。妹と兄のようにも見えるし、姉と弟のようにも見える。ところどころに散りばめられている謎は少しずつ解き明かされ、描かれている世界を理解していく過程で引き込まれていく。思い描いていたより穏やかな物語だった。
読んでいて魅力的に感じるのは沙村さんの絵だ。細い線のタッチはロシアなどの寒い地域との相性が抜群だと思う。ほとんどデレなくてもビエールカはとてもきれいだ。
残念ながら、僕は『ブラッドハーレーの馬車』の方向だろうと勝手に考えていたこともあって、肩透かし感があった。ただ、巻末の登場人物紹介とあとがきを読んだら読み返したくなります。というか読み返してください。違った楽しみ方ができるはずです。
最後に、白人ツンデレ娘を期待している方へ
描き上げてみれば企画当初のツン95%は雲散霧消していて、むしろ禿げたオッサンのツンデレ話になってしまったのは作者の不徳の致すところです。
2014-12-11
kindle版セールで安くなっています。