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なぜ僕らはラーメンにこれほど惹かれるのかー『ラーメン大好き小泉さん』鳴見なる

 

本のいいとこおすそわけ。今回ご紹介するのは、鳴見なるさんの『ラーメン大好き小泉さん』というマンガです。作者のラーメン愛が詰まっていることが感じられます。

 

 

ラーメンはどんぶり1杯だから魅力的だ

  
世の中にはラーメン好きの人が想像以上にたくさんいます。特に大学生。食費を浮かそうとして自炊しているのにも関わらず、ぽん、とラーメンに1000円払ってしまうような人をよく見る。
 
なぜこんなにもラーメンは人を惹きつけるのか。
 
それはラーメンがどんぶり1杯だから。大盛りだとか、味玉つきといったマイナーチェンジは除き、1つの店舗のメインメニューは多くてもだいたい5つ。メインメニューの数が少ないから、ラーメン屋は他の食事所に比べて多くの時間をメインメニューに注いでブラッシュアップすることができる。よっぽど怠けていない限り、短い期間でよりお客さんが求める味に近づけられるのです。
 
また、ラーメンはどんぶり1杯だけで、醤油、味噌、塩、豚骨など味が大別されていることが周知されているから、お客さんは他店と味を比較しやすい。細かい味の違いがあまりわからない素人にとっても、「ここの塩はあの店の塩よりもうまい」と言えます。
 
何も基準がない状態ではなかなか「うまい」と言いづらいですが、比較対象が生まれやすいラーメンは「うまい」と言いやすい食べ物で、誰かに「うまい」と言っているからまた食べたくなるのです。
 

ラーメン屋はハードルが低い

 
ラーメンが1杯であること以外に、ラーメンが人を惹きつける理由は、そのハードルの低さにあります。
 
最近は、友だち連れでも入りやすいようにテーブル席が用意されているお店がたくさんありますが、一方でカウンターしかない小さな名店も数多くあります。カウンターは、目の前にいるべき誰かを意識させられることがありません。
 
たとえば、お昼どきにファミレスにひとりで入ったとします。通されたのは3人ぐらい座れるであろうソファーと3つのイスが用意された席。広い分にはまあいいか、と壁沿いにあるソファーに座ると、周りに見えるのは家族連れや複数人の高齢の方々。しかし、自分の前には誰も座っていない。あと5人も座れるはずなのに、自分はひとりでここにいるんだ...。テーブル席しかないようなお店だと、こうした孤独感を少なからず味わうことになってしまいます。ですが、カウンターでラーメンを食べていれば、こんな孤独は感じなくて済みます。ひとりで入っても、安心して目の前のどんぶりに集中できるのです。
 
カウンターであることによって、目の前にいるべき誰かを意識する必要がない上に、他人の目線も気にならなくなります。スタバなんかとはとは反対ですね。「ちょっとおしゃれな自分を感じたい」なんて考えながらラーメンを食べに行くことなんて、そうそうないでしょう。
 
 
ラーメン大好き小泉さん』のメインヒロイン(?)である小泉さんは、あまり人としゃべらない、無口なラーメン好きの美少女です。
 

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本作は言わずもがな、ラーメンマンガなのですが、この小泉さんの視点でラーメンが語られることはありません。そのクラスメイトである、ラーメン初心者大澤悠が中心となって、おいしそうにラーメンを食べている小泉さんを眺めるマンガなのです。
 

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無口な美少女に、こんな風にがつがつラーメンをすすり、恍惚とした表情を見せられたら自分も食べたいと思ってしまいますね。僕は思わず読んだ後に近くのラーメン屋に足を運んでしまいました。おいしかったー。(写真はイメージです)
 
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本作に登場するラーメン屋は、あまり明言はされていないもののどれも実在するお店ばかりです。初めのお店は二郎。他には天一、中本、パパパパパインなど、どれも個性の強いラーメン屋ばかり。こうした濃いラインナップを、思わずラーメンが食べたくなってしまうように描けるところから、作者のラーメン愛を感じます。
 
グルメマンガというと、主人公が目を閉じて口を動かしながら、深く味を考察していたりするものですが、ラーメンをあまり食べたことがない人の視点からラーメン体験が語られているので、あまりラーメンに詳しくない人に向いています。というよりむしろ、ラーメン初心者にこそ、読んでほしい。
 
しかし、このマンガには絶対読んではならない時間があります。夜遅くに読んでしまうと...あとはどうなるかわかりますよね。
 
 
※2015年10月25日現在、Kindle3周年セールということで半額になっています。
 

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