いろどりぷらす

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課題解決に使える散歩を学ぶマンガ『散歩もの』−久住昌之、谷口ジロー

本のいいとこおすそわけ。
 
今回ご紹介するのは『散歩もの』という、散歩をテーマにしたおすすめマンガです。『孤独のグルメ』の黄金コンビ、久住昌之さんと谷口ジローさんの描く散歩に惹きつけられます。この作品を読み、散歩は課題を打開するツールとして最適だと思いました。
 

 

『散歩もの』ってこんなマンガ

まずはあらすじから。主人公の上野原はどことなく諦念の漂う文具メーカーのサラリーマン。面倒でも、目的のない散歩を楽しめる中年です。歩いていて、ふと目に入った雑貨屋で妻に批判されることがわかっていながら、高い「エジソン電球」を買ってしまうくらいには好奇心旺盛です。
 

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『散歩もの』を描く際の3つの決め事とは

散歩を扱ったマンガというと、作者が思ったこと・感じたことを細かく描いて、体験を演出するエッセイ系のものが多いですが、本作はあくまで主人公がいる物語。3人称視点で、主人公の人間関係や、散歩をする様子が描かれています。作り話とはいえ、きちんと取材をしていて、巻末の作者あとがきによると、このマンガを書くために作者は3つの決め事を自分に課したそう。
 
①調べない。「観光ガイド」や「町歩きマニュアル」など、本やインターネットを調べて出かけない。
 
②道草を食う。事前に地図は見ても。歩き始めたら、その時その時の面白そうな方へ、積極的に横道にそれる。
 
③ダンドらない。時間を限らず、その日で決めようと考えずのんびり歩く。

 

この制約があるおかげで、リアルな散歩の魅力を引き出せています
 

散歩の魅力は目的がないところ

散歩の魅力は、「合理的に行動すべき、明確な目的がない」というところ。 何も考えずにただ歩くのもいいし、道草を食いながら歩いてもいい。ガツガツと目的遂行のために合理的な行動を取る必要がありません。だからこそ、歩いている周りにある小さな興味の種に気づけます。
 
たとえば、主人公が他社との会議が終わってデタラメに歩いているワンシーン。
 

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「テレビや雑誌で見た場所へ出かけていく散歩は散歩ではない」という名言が出ているこのシーンでは、街の看板や電柱で自分の居場所を確認しています。もし、主人公がGoogle Mapを使って会社間の移動時間を最短にしようとしていたら、この場所に商店街があることや、旧東海道であることなどは知らずに通りすぎてしまったでしょう。
 
散歩はこうした小さな気づきに恵まれる場です。「ささやかな日常を大切にしよう」的なことが言いたいのではありません。より実用的な散歩の使い方があると思っています。
 
それは、頭を悩ませている課題の打開です。
 

散歩は課題解決に役立つ?

自分の目の前に解決すべき課題があり、時間を割いて答えを出そうとしているものの、有効な手立てが見つからないということは良くあると思います。そのとき、 無駄に時間を使ってしまう最も多いパターンは、同じ論理展開を何度も頭の中で繰り返し、うんうんと思い悩んでしまうことです。同じ論理展開なので、辿り着く地点は毎回同じ。でも、自分は考えているつもりになっている。こんなほぼ思考停止の状態に陥ってしまったら、なかなか自力で納得できる答えを出すのは難しいでしょう。
 
そこで効果的なのが、新たな変数を獲得することです。散歩を通じて新たな変数を獲得することで、課題が解決に向かうはずです。
 
目的のない散歩なんて無駄だ、と思うかもしれませんが「頭を空っぽにする」というのは実は人間には難しい行為で、何か課題があると、どんなときも常に頭のワーキングメモリーを使っています。つまり、何も考えていないつもりでも、いつも頭のどこかでその課題について考えているということです。
 
なんとなく歩いていたら、良いアイデアが思い浮かんだ、という経験は誰でもしたことがあると思います。そんなことが起きるのは、「ただ街を歩いている」状態でも、実は見ているものを課題と結びつけて考えてしまっているからです。歩いている場所が変わり、景色が変わるといろいろなモノが目に入ってきます。ファミリーマートの看板や、前を歩いている人のかばん、青々と茂る雑草、さびれている店頭。意図せず見ていると、 頭のなかで反応が起き、これまで結びつかなかった何かに気づく。そうすると、いつのまにか課題に対する答えが出ているのです。
 
新たな変数を獲得し、課題を解決するために目的のない散歩をするのがおすすめです。あまり散歩に馴染みのない方は『散歩もの』を読んで1つのモデルケースを学びましょう。
 

次回予告

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