いろどりぷらす

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ふつうの生活に彩りをプラス!おもしろいコンテンツを紹介したり、考えたことを書きます。

「どうやっておもしろい本を見つけているの」という問いの答え

僕はわりと本を読む方なので、そのことを話すと「どうやっておもしろい本を見つけているの」と聞かれることがある。もちろん読む本のすべてがおもしろいわけではなくてつまらないと思ったらすぐに読むのをやめるといった細かいコツもあるのだが、本を選ぶことに限っていえば方法は2つある。

 

いい本を見つける初心者向けの方法

まず1つは好きな作品を書いた作家の作品を掘ることだ。1つ好きなものに出会えたのだから、その作家の扱うテーマなり文体なりが刺さったのだろう。1人の作家でも作品によっていろいろな挑戦をしているわけだから、はじめに好きになったものとはちがう楽しさを味わえるはずだ。

 

もう1つの選び方は、人に紹介してもらうことだ。もし自分で選ぶとなると本屋に整然と並ぶ何千何万という紙の束の中から、表紙のデザインや目次を見て判断しなければならない。慣れてくるとペラッと表紙をめくってパラパラと中をみればだいたい自分が自分べき本かどうかわかるが、あまり本を読まない人にとってはハードルが高い。いうなれば、渋谷の街ですれ違う女の子の顔をじっと見つめ、好みの女の子に話かけるようなものだろうか。そもそも好みの女の子を見つけるのが大変だし、ましてや話しかけるなんてよっぽど普段からナンパをしていないとできることではない。少なくとも僕はできない。

 

自分で選べないのだから、他人のおすすめに乗っかってしまうのがラクな方法だ。もちろん好みではない作品に出会うことになるかもしれないが、そういうものこそ新鮮な発見があるものだし、そもそも意外とハズレも少ない。自分の人となりを理解してくれている友人なら、作品との共通項を見出して「あなたならこの作品が好きになると思う」と絶妙なところを突いてくるはずだ。

 

『anan』で見つけたおもしろい本

これら方法の亜種として、雑誌の小説特集なんかも使える。少し前、友人の女性に「あなたこういうの好きでしょ」と『anan』の小説特集の号を貸してもらった。そこで目についた小説が『独白するユニバーサル横メルカトル』 という短編集。お笑いコンビのおかずクラブ、ゆいPが紹介していたものだ。

 

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この作品を... 

 

 

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後ろの人が紹介していました。

 

 

いかにもおどろおどろしい表紙と、「周囲に恐怖をばらまく殺人鬼も、ひとりの少女にとってはヒーローだった」というような文章に惹かれた。

 

平山夢明さんの作品ははじめて読んだが、「このミステリーがすごい!」で1位になっただけある。電車で読んでいたら乗り換えを忘れてしまった。どの作品の陰惨な描写が多いので苦手な人は少なからずいるというか読めない人のほうが多いかもしれないがどの短編も話の筋がおもしろい。

 

『独白するユニバーサル横メルカトル』はこんな本 

『anan』上で紹介されていたのは『無垢の祈り』という短編。主人公の少女が殺人鬼に救いを求める物語だ。『Ωの晩餐』はヤクザが部屋に監禁している象のように巨大になってしまった男性に死体を食べさせる主人公の話だ。このさわりだけでも血なまぐさい匂いがしてくる。苦手な人は読まないことをおすすめする。表題作である『独白するユニバーサル横メルカトル』 は思わずなんだこれ、と中身が気になるタイトルだが簡単にいうと地図から見たある事件を描いた作品である。ユニバーサル横メルカトル記法で作られた地図がある事件を独白するのだ。おもしろそうでしょう。各短編は30ページほどだけれど、電車で読むと僕のように乗り換えができなくなってしまうので、たっぷり時間のあるときに読んでみてください。

 

おかずクラブのゆいPがおすすめしていたこの作品を読むと、なんだか彼女の奥底にある知られざるどろどろした欲望のようなものに少し触れられたような気がしてくる。こんなふうに好きな子に紹介してもらった本を読んで、だったらこれも好きかも、なんておすすめしあうのは楽しいですよ。