『月がきれい』第一話の感想
日本でいま成人している人のほぼ100%が中学生を経験している。みんなが同じ空間で飽きるぐらいずっと一緒に過ごすというのは人生でもなかなかできないことだ。
社会人にもなると、自分が勤めている会社以外にもいろんなコミュニティに所属していて、仕事が終わったら一緒に仕事をしている仲間ではない友達と時間を過ごすこともあるだろう。しかし中学生は良くも悪くも学校がすべてだ。テストでいい点数を取って校内の掲示板なんかに張り出されたら嬉しいし、仲良くしていた友達からないがしろにされたら悲しい。閉鎖的であるからこそ、校内で起きるささいなことが自分の心を刺激するのだ。
『月がきれい』というアニメの第1話を見た。主人公の小太郎は小説が好きな男子中学生。ヒロインの茜は引っ込み思案な女子中学生。たまたま同じクラスになった2人がなんとなくお互いの存在を意識しながら、これから恋に発展しそうな雰囲気がプンプンしてとても楽しい。
主人公とヒロインがそれぞれ家族と一緒にファミレスで夕食を食べるところで、まだまともにしゃべったことのない2人が初めて顔をあわせる。
まずここでかわいいのが小太郎。ドリンクバーで何を飲もうか迷っているところで茜ちゃんが見ているから、と慣れないコーヒーを背伸びしてコップに注いでしまうんですよ。全然おいしく飲めないのに。少しでも大人な姿を見せたいという見栄に、親が幼い子を見るような気持ちになった。
そして茜は茜でかわいい。小太郎の家族と顔を合わせただけで、何も悪いことをしていないのに、帰り際にこんなことを言い残すのだ。
「今日のこと、学校では言わないで」
うわーーーーー!!!何これ!?!?
30を越えた男女であったら、あたかも不倫しているかのような言い草だ。女の子にこう言われたら、なにかイケないことをしたんじゃないかと錯覚するでしょ。確かに僕も中学生の頃は学校で波風が立たないように、噂の種になるようなことはできるだけ避けていた覚えはある。懐かしい。
きっとこの作品には中学生のリアルが詰まっているから、僕の奥底に埋まった当時の見栄や恐怖、興奮なんかが掘り返されて、なんだかこちらも恥ずかしくなってしまうのだろう。しばらくは幼い気分で過ごせそうだ。
公式サイト : ☾ 月がきれい