いろどりぷらす

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熱くて痛い、少し前の自分を見ているような気になる ―『アオイホノオ』島村和彦【メディア芸術祭】

 

本のいいとこおすそわけのコーナーです。

 

『アオイホノオ』は2014年度の第18回文化庁メディア芸術祭、マンガ部門の優秀賞を受賞した作品。2007年から連載が始まり、未だに連載中です。なので最終的な展開はまだわかりませんが、おすすめなのでご紹介します。

 

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あらすじ

 

舞台は1980年代の初め、大阪の大作家(おおさっか)芸術大学。主人公、焔燃(ホノオモユル)は漫画家を目指していた。「自分の実力ならいつでもプロデビューできる」と自信過剰な性格をしていたが、豊かな才能に恵まれた同校の学生達や、あだち充、高橋留美子と言った若手漫画家の台頭を目の当たりにして自信を揺るがされる。それでも焔はプロの漫画家になるため歩み始めるのだった。(wikipediaより)

 

 

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フィクションとわざわざ言うだけあって、フィクションのフレームをうまく使っている。一部架空の話がありながら、実在する人物が多数登場する。

 

主人公の焔燃は名前の通り、かなり熱い情熱を持っている。本気でマンガ、アニメよりも優れた芸術はないと思い込んでいるし、マンガ界、アニメ界の行く末を本気で考えている。熱い、熱すぎる!

 

しかし、考えてばかりなのだ。

 

高橋留美子のマンガをサンデーで読み、「他の場所で描いたほうがいいんじゃないか」などと上から目線でひとりごとを言う。典型的な厨二病だ。

 

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ただ、自分は口だけだということを自覚はしていて、「そろそろ投稿作品でも描かなきゃな…」とつぶやく。

 

しかし、描かない。

 

1巻で描いたのはマンガの枠線だけ。
いまなら少し笑うことができるが、以前の自分を見ているような気がして痛い。誰だって、自分は何もせず人の作品を見て上から目線でアドバイスしたくなる頃があっただろう。というか、いまでもそうなのかもしれない。

 

ストーリーの展開はゆったりとしていてストレスを感じそうだが、そう感じさせないのは節目で挟まれる作品評は興味深いからだ。エヴァンゲリオンで有名な庵野秀明が作中で登場し、彼の描いたパラパラマンガ(『じょうぶなタイヤ』)を見た時に燃は衝撃を受ける。

 

 

俺が、今までアニメだと思って描いていたのはパラパラ漫画に過ぎなかった。

 

と絶望するのだ。パラパラマンガとアニメはほとんど一緒ではないか、と思っていたので新鮮な視点だった。僕の解釈では、パラパラマンガは単に人やものの動きを想像して、描いている。だから物理的には動いているが、現実とはちがう。一方、庵野のアニメは車の上に車を落としたとき、解像度のちがいはあれど、現実と同じような変化をしていく。それがパラパラマンガとアニメの違いかもしれない。

 

ところどころにこうした作者の優れた観察眼が散りばめられているため、ストーリーの展開が遅くても飽きない。

 

庵野のアニメを見て絶望するも、燃は重度の厨二病を患っている。まだ自分の方が勝っていると自己評価して、すこしずつ前に進んでいく。少し前の厨二病の自分を見ているようで軽い痛みを感じながらも、笑えるマンガだ。

 

 

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