いろどりぷらす

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『君の名は。』は単なる男女入れ替わりラブコメではなかった。(ネタバレなし)

 

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思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを

 

新海誠監督の最新作、映画『君の名は。』は小野小町の和歌をモチーフの1つとしているという。現代語に訳すと「あの人のことを思って眠りについたから夢に出てきたのだろうか。夢と知っていたなら目を覚まさなかっただろうに」と、思いを寄せている恋心を描いている。

 

もうひとつ本作のモチーフは平安時代の『とりかへばや物語』。簡単にいうと、男女が入れ替わって生活する物語だ。この2つのモチーフは和歌であったり平安時代の物語であったりとても古いものであり、他の作品でも要素としては目にしたことがあるかもしれない。僕も予告編を見る限りでは既視感しかなかった。「あー、男女入れ替わりものかー」と多少わかったフリをしていた。が、違った。ちゃんと予想を裏切る要素が組み込まれていたのだ。

 

男女の入れ替わり物語だと、たいていはお互いの元の体を取り戻すことを目的としている。その過程で起こるラブコメ要素(女子更衣室で着替えないといけない、男子トイレの小便器で用をたさないといけない、など)を楽しむものが多い。もちろん女性の体にしかない豊かなおっぱいを揉んだり、男性器に触って恥ずかしがるような描写はあった。けれど『君の名は。』はそのテンプレートをきちんと乗り越えて新しい物語になっていた。

 

最初の予想とはまったく違う場所に連れていく作品にしなければいけないと思っていました。」「どこまでできたかは分かりませんが、1分たりとも退屈はさせない、かつ予想もさせない、途中で興味を途切れさせない。107分という時間を、間違いなく面白いと思ってもらえるように、というのが僕の一番のテーマでした。」という新海誠監督の言葉の通り、予告編ではわからない地点にきちんと連れていってくれたことが本作を評価したいポイントの1つだ。

 

彼の作品を見た人がよく口にする、きれいな景色は本作でも健在。特に僕が見入ってしまったのが、山登り中の紅葉のシーンだ。赤く染まった葉のすき間から光の筋がすーっと差してくる様子は他のアニメでは見たことがない。前作『言の葉の庭』は新宿御苑の青々と茂る草木や、しとしとと降る雨のカットが魅力的だったが、今回は赤い紅葉のシーンに注目してほしい。

 

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(予告編に出る、この家屋のカットも好きだ)

 

主題歌を担当していたRADWINPSは、2014年くらいまでの全曲を聴いていたほど好きなアーティストだったので期待していた。しかし要所でかかる楽曲は少し物語の展開を遮ってしまっていたように思う。寿司を食べているときに、いくらおいしくても麻婆豆腐を出されてしまったら口の中は麻婆豆腐の味になってしまうだろう。(言いすぎだったらすみません。)

 

とはいえ、予想を裏切る物語の展開や風景の魅力は存分に味わえるので、早めに見てまわりの人と語ると楽しいですよ。

 

 

関連リンク

映画『君の名は。』公式サイト

「君の名は。」が1分たりとも退屈させない秘密 | 映画界のキーパーソンに直撃 | 東洋経済オンライン