野武士だったらどう食べる?という変な視点のグルメマンガー『野武士のグルメ』
本のいいとこおすそわけ。今回ご紹介するのは『孤独のグルメ』で有名な久住昌之さん原作の『野武士のグルメ』という マンガです。野武士のように食事をしたい、というちょっと変わったこだわりを持った人が主人公のグルメマンガです。癖のあるグルメマンガはおもしろいですね。
内容紹介、あらすじ
還暦で知った、この醍醐味!! こういうのがウマいんだ。最高だね、焼きそば&昼ビール!! サラリーマンとして定年まで真面目に勤め上げた香住武(60歳)は、昼下がりの散歩中、ソースが香る焼きそばとキンキンに冷えたビールのうまさを知る。定年後に見つけた秘かな楽しみ、それは「ひとり飯」「ひとり酒」。ひとりだからこそ人目を気にせず、己の流儀で思うがままに食べたい─そう、野武士のように。もう食べずにはいられない、垂涎の極旨グルメコミック!!(Amazon.co.jp: 漫画版 野武士のグルメ)
「野武士だったらどう食べる?」いつもそう考えている
野武士のグルメ−このタイトルをはじめて見た時、侍がいるような時代の食事文化について描かれているマンガなのだと思っていました。Kindle版でも1000円近くするこの作品に興味はあれど、なかなかハードルが高く読んでいませんでした。しかし、セールで300円ほどになっていたので即購入。舞台は現代でした。
グルメマンガの主人公は多かれ少なかれ、自分の食事のスタイルや食材なんかにこだわりを持っています。現実の世界でもよく見かけます。女子会をいつもやっているような女の子たちは、黒い看板にサンセリフ体のフォントのロゴ、ヨーロッパのホテルのレストランなんかをイメージしたお店で食事をしたがるかもしれない。しかし、『野武士のグルメ』の主人公は決してそのようなお店は選ばない。
本作が興味深いのは、まずい料理も含まれているところ。だいたいのグルメマンガはおいしい料理ばかり紹介して、「飯テロ」として読者を苦しめるのが通例。けれど、本作ではまずい料理を食べている様子も描かれています。
なぜそんなことをしているのかというと、料理について描いているわけではなく、食事の体験を描いているから。
野武士を軸として、食事の体験を描いている
「新宿にこういう焼き肉の店があって、カルビがおいしいんだよ」というだけのことではなくて、「今日は会社で進めていたプロジェクトが一段落した。打ち上げは別日程でやるとして、まずは自分へご褒美として普段は入れない高級焼肉店に来た。〜中略〜やっぱりここのカルビはうまい!」というのが食事の体験。料理ではなく、食事の体験だから、前後の文脈いわば物語が必ずついてくる。
料理について描くだけであれば、きれいにデッサンをして、使われている食材がいかによいものであるかを語り、食感、味について細かく語れば完結してしまう。けれど、食事の物語を描くとなるとそうはいかない。本作における主人公の食事へのこだわりのテーマは「野武士」にあります。
彼には野武士のごとく食事をしたいという憧れがあります。「野武士ってなんだよ」という感じではありますが、この設定があるおかげで全体的に渋い仕上がりになっています。
ほんとうにグルメ好きの方は、毎日の1食1食が勝負なのでしょう。目の前の食事をいかに良いものとするか。野武士としての意地が見られます。
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