誰だって、自分の居場所を探してるー『りびんぐゲーム』星里もちる
本のいいとこおすそわけ。今回ご紹介するマンガは星里もちるさんの『りびんぐゲーム』です。人の居場所がテーマのラブコメです。ネタバレになってしまうので詳しく書きませんが、いま出版したら大炎上しそうな気がします。笑
概要
舞台はバブル全盛期の東京。不破雷蔵(ふわらいぞう)は念願の広い部屋に引越をする。同時期に不破の勤める「ナミフクDMサービス」も会社を移転するが、なんと移転先は不破の新居の目の前。しかも地震が起こり、会社の移転先となるはずのビルが傾いてしまい「ナミフク」は不破のアパートに間借りすることに...!
典型的ラブコメと思いきや...
本作が出版されたのは1991年、いまから約25年も前の作品です。自分が生まれる前の作品をなぜ知っているのかというと、僕が尊敬している吉田尚記さんが『ノイタミナラジオ』で紹介されていたからです。吉田さんは、星里もちるさんのファンらしいです。
90年代初期の作品ともなると、さすがにところどころに時間の経過を感じる描写があるものの、作品の魅力は全く薄れていません。メインの要素はラブコメとしてのおもしろさにあります。主人公の元彼女である時子とのあいまいな関係、15歳三つ編みツインテールのいずみちゃんとの近づきそうでなかなか近づかない距離。絵柄の雰囲気と相まって、一昔前のラブコメ感が味わえます。
『りびんぐゲーム』はジャンルとしてはラブコメなのですが、男女がイチャイチャするだけの、いわゆる典型的なラブコメで終わらないのがこの作品の魅力。まず1つは...ネタバレなので秘密にしておきますが、この1つの出来事のおかげで、単に主人公がモテモテの架空の物語というイメージから「リアルだ!」という印象が強くなりました。いま出版したら炎上するのではないでしょうか。笑
もう1つは「居場所」とはなんなのか考えさせられるところ。タイトルに使われているリビングといえば、家族が集まって一家団らんを楽しみ、くつろぐ部屋ですよね。主人公をはじめとする登場人物たちは皆、リビングのような自分の居場所がどこにあるのか、どこなら自分の居場所になり得るのか探し続けます。その過程で、人間関係的な意味での居場所として好きな人との距離を縮めようとしたり、社会的な居場所としてどんな仕事をしようか悩んだりもします。
誰だって、自分の居場所について悩む時期があるはず。恋人とうまくいっていない時、新しい会社に入社した時。ずっといられるような居場所はいったいどこにあるのか。たぶん答えはないけれど、ヒントはここに詰まってる。